スペインのチップ事情
日本の習慣にはない「チップ」の文化。海外ではそれぞれの国でチップの額やチップに対する捉え方が違います。
旅行や出張でスペインに行くなら、その前にスペインのチップ事情をチェックしておきましょう。
サービスを受けたら、チップでお礼を
スペインではチップは義務ではなくマナー
ヨーロッパではフランス、ドイツ、イギリスなどチップを渡す習慣が根付いている国々がありますが、スペインではそれらの国に比べるとチップに対する考え方がややおおらか。一般的にはチップがウエイターたちの収入に関わるというものではなく、必ず渡さなければいけないということはありません。ただ、場所によって心遣いを表すのがマナーとして習慣づいています。
チップは何のため?誰のため?
お客さんたちが払っていったチップは、スタッフの報酬となります。
レストランであれば、売上はオーナーのものとなり、チップはウエイターやウエイトレスたちのものに。国によっては受け取った額をそのままスタッフが自分の取り分とすることもありますが、スペインではすべてのチップを1つにまとめてから、それをスタッフの人数で均等に割って分配するというのが一般的のようです。
カードでの支払いにチップを上乗せした場合でも、チップ分はオーナーの利益にしてはいけないことになっており、本来はスタッフたちに届けらているはずです。
あまりにもスタッフの態度が悪かった場合にはチップを渡さないことで残念な気持ちを表せますが、通常はサービスを受けたらスタッフの方へお礼を届けられるように小銭を残しておきましょう。
チップが必要な場所、不要な場所
レストランやバル
レストランやバルでは、食後にチップを残すのが礼儀です。
ルールがあるわけではないので、チップを支払わなかったからといってその場で指摘されたり、冷たい目で見られたりするようなことはありません。とはいえ、できれば快くお礼はしたいものですね。
昔ながらのバルでは、日本でいう“お通し”となるタパスを無料で出してくれる店もあります。そんな店では特にチップはしっかり支払っておきたいところ。高級レストランでや日本食料理店でも接客対応を受け美味しい料理を味わったら、チップを渡すことで気持ち良くお店をあとにできるはずです。
カフェ
カフェでは店によってチップを払う場合があります。
スターバックスのようにカウンターで前払いをしてから席に着くような場合や、最近増えているスペシャルティコーヒーコーヒーを提供している店でテイクアウトするような時には、払わなくても大丈夫です。
ただし、昔ながらのバルスタイルの店でコーヒーを飲む時や、テーブル席でケーキやアイスと共にくつろぎながらティータイムを楽しんだ時には、チップを払いましょう。
金額は厳密に計算しなくても、例えば、2.3ユーロのコーヒーの支払いに2.5ユーロを出したら、おつりで返ってくる20セントをチップに...。というように、おつりをそのまま残しておけばOKです。
ホテル
スペインのホテルでは、チップを払わなければいけない、ということはありません。
しかし、ベッドメイキングやルームサービスを頼んだ時、荷物を運んでもらった時などにはチップを渡すと丁寧です。
泊まるホテルの金額やサービスを受けた内容にもよりますが、金額は2〜5ユーロほどを目安に。その場で直接渡すか、もしくは部屋を出る時にテーブルや枕元に置いておきます。それが忘れ物ではなくチップであることがわかるように「Muchas gracias(ムーチャス グラシアス)=ありがとうございました」といったメモを添えておくと気持ち良く受け取ってもらえるはずです。
タクシーや配車サービス
スペイン現地の人々の中には、タクシーでチップを払わない人たちもいます。
最近はUberのような配車アプリを利用する人も多く、またタクシーでもカード払いをする場合は料金以上のチップを払わない人がほとんど。例えば、マドリードのバラハス空港と市内への行き来は一律33ユーロと料金がもともと決められているため、それ以上を支払う必要はありません。
だからといって、「払ってはいけない」「払うと損」ということではなく、少しでもチップを払えるのであれば運転手さんにとってはもちろん嬉しいはずです。
重い荷物を運んでくれた、快適に目的地まで辿り着けた、という場合には、1〜2ユーロをチップとしてみてください。カードで支払う時に、端数を繰り上げてやや多めに支払うというのも1つの方法です。
スペインでのチップ額の目安と払い方
料金の10%程度、もしくはおつりをチップに
アメリカのように金額の◯パーセントがチップ代、というように定められた額を払わなければいけないというルールはありません。そのためあくまでも目安としてになりますが、レストランやバルでは料金の10%程度をチップにすると良いでしょう。
飲食店での会計は、レシートをトレーに乗せてテーブル席まで持ってきてくれるのが定番のスタイルです。支払いはそこに現金を置くか、またはクレジットカードで。その際、まずはレシート通りに精算を済ませ、チップは席を離れる最後にトレーに残しおきます。現金の場合は、おつりをもらってからその一部をチップにするというのがよくある方法です。
カード払いの際にまとめてチップを払うなら、引き落とし金額にチップ代を加算した数字を伝えてみてください。スペイン語の表現については以下を参考に。
チップを払うシーンに役立つスペイン語
チップを支払うシーンで知っておくと便利なスペイン語フレーズをご紹介します。
カタカナ読みするだけでも通じるはずなので、ぜひひとことでもスペイン語でのコミュニケーションに挑戦してみてください。
「チップ」はスペイン語で「プロピーナ」
スペイン語で「チップ」のことを propina(プロピーナ)といいます。
「ありがとうございました。ではまた」
Muchas gracias, hasta luego.
ムーチャス グラシアス, アスタ ルエゴ
チップを渡すのは帰り際です。最後に「ありがとう」と伝えながら気持ちを残しましょう。帰りの挨拶は「さようなら(アディオス)」よりも、「また」という意味のある「アスタ ルエゴ」を使うと、より親しみのあるニュアンスになります。
「とても助かりました。ご親切に感謝します」
Le agradezco mucho su ayuda.
レ アグラデスコ ムーチョ ス アユダ
親切なサービスを受けたら、このように丁寧なひとことを伝えてチップを渡すと素敵なコミュニケーションになるでしょう。
「チップを合わせて◯◯ユーロを支払います」
Cóbreme ◯◯ euros.
コブレメ ◯◯ エウロス
カード決算をする時、チップ分を加算した数字を伝えれば小銭がなくても支払えます。お店やタクシーの運転手さんにお礼をする時にはこの方法が可能です。
「おつりは取ってください」
Quédese con el cambio.
ケデセ コン エル カンビオ
お釣り分をチップとして相手に渡す時、「おつりは不要です」という意味で伝えられるのが、このひとこと。さらりとこんなフレーズを口にしてさりげなくチップを渡せたら粋ですね。
ちょっとした心遣いが良い時間を作るもの
チップを受け取れば、心持ちやサービスが向上していくるのは自然なこと。払う側も、親切な対応に感動すれば、お礼を伝えようという気持ちがおのずと湧いてくるもの。こうした双方の相乗効果が、より良いサービスと良い思い出に繋がっていきます。
日本とも他の国とも違う、ほどよく緩く、でも大切にされているチップの習慣。スペインを訪れたら、そんなちょっとした体験も楽しんでみてください。